19 #2

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タツヒコは優しい。 お父さんみたいに、お母さんみたいに、お兄ちゃんみたいに。 相変わらずあたしは、風邪をひいたり、貧血を起こしたり、お腹を壊したり、まあ、色々でしょっちゅうヨレヨレしている。 そのたびに、タツヒコは介抱してくれて、タイやコウは用事を言いつけられる。 客商売なんだから、風邪菌くらいもらうさ。 女だもん、毎月血が足りなくなる日があるし。 食べるの大好きなんだから、ついついたくさん食べたりするんだよ。 これが生きてるって事でしょ? かいがいしくあたしの世話をするタツヒコに、感謝してる。 でも、あんまりあれこれ指図されると、逆らいたくなる。 薄着過ぎるとか、ひざ掛けしなさいとか、細かいよ。 毎日体重測れとか、今日は増えたか減ったか、いちいち聞かないでほしい。 タイとコウに、あたしの生理日バラさないでほしい。 肉食べなさいとか、野菜も、なんて言わないでほしい。 みんなあたしのことを思ってのことなんだから、文句も言えないけど。 わかってるけど。 すっかりお母さんキャラになっているタツヒコに、馴染めてないあたし。 あたしは幸せだ。 毎日ごはんが食べられて、住んでるところは快適マンション。 運転手つきのお出かけで、エステなんかにも行っちゃってる。 お金の心配もする必要ない。 むしろ、不相応な位のお給料が振り込まれてる。 あたしにだってその高額さの意味はわかる。 だけど最近、タツヒコがあたしに触れない夜が多くなった。 帰ってきて、アイスを冷凍庫に入れて、お休みの羽のようなキスをして、自分の部屋へ戻っていく。 帰ってこない日もある。 壊されるくらいに抱かれたあの夜が、幻のように思える。 ゆっくりと、穏やかに、1回だけ。 そんな抱き方をするようになったタツヒコ。 最初の頃に戻ったという訳じゃないけど、何かが変わった。 タツヒコは優しいし、あたしを大事にしてくれる。 だけど、あたしが欲しい“好き”は、もうタツヒコの中にはないのかもしれない。 ひたひたと浸みてくる予感は、あたしの全身に行き渡って、もう気付かないふりはできそうになかった。
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