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ーーーヨウジーーー 「久しぶりのネガティブ病みたいです。中川には知らせるなって言い張って。ヨウジさん、お願いします。」 怪我をしたハルが動けそうにないと、テツからの電話。 階段でこけた怪我自体は、大したことはなさそうだ。 問題は、ハルちゃんのガラスのハートの方か? タツヒコと何かあったのか? もしそうなら、悪いのは全面的にタツヒコだ。 イライラしながら入った店で、途方に暮れたような顔をした2人を見たら、少し心が治まった。 カズとテツから、順番に話を聞いて、幾つか質問してから、2階へ登っていった。 階段を昇り切ると、2階が見渡せる。 ソファで、眠っているハルを見つけて、思わず、“ハルノちゃん”と呟く。 毛布の中でハルは小さく小さくなっていた。 顔を隠して、体を丸くして。 自分の存在をなにかから隠すように。 子供の頃から変わらない。 いくら両親や兄が庇おうとも、世間はハルを傷付けた。 『ヤクザの娘。』 その言葉とともに降りかかってくる、侮蔑や、嫌悪を、うまくかわせずにハルはしょっちゅう泣いていた。 子供ってもんは、純粋で無垢だなんて嘘だ。 無知で、残酷。 自分を中心に世界を回す。 生まれは変えられない。 強くなればいいと言われても、ハルはそれができなかった。 昔に戻ったようなハルの姿が俺を哀しくさせる。 いったい何がハルをこんなふうにしたのか。 タツヒコへの連絡を、頑なに拒んだということは、そっちのセンか? オレが口出ししていい事か? 俺はハルのお父さんだからな。 娘が泣いてれば、全力で戦うさ。 全力で守る。 俺はハルだけの味方をするんだ。
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