19 #2

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「ハール。」 眠っているハルに、敢えて声をかける。 ほっといたら、明日の朝まで寝続けるかもしれない。 「ようちゃんが来たぞー。」 もそもそと、寝起きのハルの顔が出てきた。   「ようちゃん?」 「そうだよ。怪我、大丈夫か?痛くない?」 「うん、平気。テツさんが?」 微妙な間の後で、慌てて話し出すハル。 鎧は固いか。 「そうだよ。ハル、そうやってると、芋虫みたいだな。」 「やだ、ようちゃんってば。あはは。」 よし、笑った。 ハルが体を起こして、毛布をたたみ始めようとする。 「そのまま足に掛けてなよ。」 押し留めて、寝乱れたハルの髪を梳いた。 表情が暗いな。 目に輝きがない。 「階段でコケるなんて、ハルは相変わらずだな。」 「終わったはずの階段が、もう1段あった、みたいな?はは。」 握った毛布を見たまま顔が上がらない。 「ハル、大丈夫か?」 「・・・うん。」 全然大丈夫じゃねーよ。 タツヒコは何やってんだ? テツもカズも、わからないのか? “絶対に中川に連絡しない”を交換条件にして、ハルは薬を飲んだ。 傷の痛みと、頭痛の予兆で、薬を飲むべきなのに。 クスリが効いて、眠ってしまうことを恐れてた。 自分が寝ている間に、テツとカズがタツヒコに怪我のことを知らせたら困るからだろう。 タツヒコに知らせが行って、怒られるのが嫌なのか? 違うな。 タツヒコは、仕事を放り投げてハルのところへ来る。 それが嫌なんだろう? 面倒をかける自分が嫌なんだろう? 「頭痛は?」 「痛くないよ。」 「足の方は?」 「ちょっとズキズキするだけ。」 心はどうなんだ、とは聞けない。 「時間まで、もうちょっと休むか。」 「うん。」 元気がないから、ハルは従順だ。 「ちゃんと起こしてやるから、安心してな。」 「ありがとう。」 もう1回、ハルを芋虫にして横にする。 音をたてないように階段を下りて、テツとカズを顎で呼んだ。 カウンターの外、1番奥まった席まで行き、座りながら2人を睨んだ。 「説明してもらおうか?」
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