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ーーー春野ーーー どうしようかな。 もうひと玉は、いけそうなんだけど。 1人ラーメン中。 とんこつ醤油の、細い麺。 薄目に切ったチャーシュウ。 炒めて香ばしいメンマ。 たっぷりかかった青いねぎ。 スープから、微かに感じる生姜。 タイやコウ達と一緒に来たことはある。 あたし達のお気に入りの店。 マンションから駅まで歩くと、何分かかるのか。 暮らし始めて1年半以上たって、やっとそんなことを考えるようになった。 大事に守られて。 バスや電車に乗ることなく、どこへでも行けた。 タイやコウ、時には加藤さんやカズさんまであたしのために車を出してくれている。 逆らう訳じゃないけど、何かあった時に1人でも動けるようにしたい。 駅まで歩いてみよう。 コートをひっかけて、ふんふん鼻歌を歌いながら歩いていたらおなじみの暖簾。 衝動的に店に入って、大盛りを注文した。 いつものおいしさに、いっきに食べて、どんぶりに口を付けて、スープも沢山飲んだ。 かなり量の減った丼のスープを見ながら、悩む。 ここに替え玉を入れてもらっても、スープの量とのバランスが悪すぎる。 普通盛でもう1杯、頼んじゃおうか。 でも、チャーシュウはもうごちそう様なんだな。 「お客さん、替え玉どうする?」 カウンターの向こうから声をかけられた。 いつもカッコよくタオルを頭に巻いているお兄さんだ。 「食べたいんだけど、スープ殆んど飲んじゃって。もう1杯、普通盛をお願いしていいですか?」 「ああ、いいよ、ドンブリかしてみな。」 見ていたら、あたしが使った丼にスープを足して、替え玉を入れて、メンマをトッピングしてくれてる。 「ハイ、お待ち。メンマはサービス。」 「わあ、ありがとうございます。いただきます。」 スープも麺も熱くて、メンマは香ばしくて。 おいしい。 あたしはまた、すごい勢いで食べ始める。 今度は遠慮なくスープを思う存分飲んだ。 ああ、おいしかった。 こういうお店は回転率が大事なので、長居は無用だ。 コウの受け売りだけど。 レジで会計をして、ごちそうさまと言うと、カウンターのタオルはちまきお兄さんが声をかけてくれた。 「いっぱい食べてくれてありがとうね。」 「こちらこそ、色々サービスしてもらって、ありがとうございます。」 「久しぶりに豪快な食べ方する女の子見たよ。」 「あはは、そこは一応お礼言っときます。」
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