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ーーー春野ーーー 大きな窓のある部屋は明るかった。 フワリと回された腕があたしを引き寄せる。 少し上を向いて、タツヒコのキスを待った。 優しくて長いキスがあたしを溶かしていく。 コートや上着を脱いで、タツヒコはネクタイを緩めた。 2人で並んで座って、何回もキスをした。 キスをしながら、笑うあたし達。 「春野。」 「うん。」 「やっと俺のものになった。」 「あたし?」 「ああ。もう誰にも触らせない。」 「うん。」 「わかってるのか?法律も含めて、何もかも春野に一番近い人間は俺だから。」 「旦那様だもんね。」 ぴたっとタツヒコが固まった。 ちょっと図々しい言い方だったかな。 浮かれて、調子に乗ってる自分が恥ずかしくなって下を向く。 座り直して2人の間に少し距離を作った。 そっと両頬を包む掌。 顔を引きあげられて見つめたタツヒコの優しい笑い顔。 タツヒコは最近こんな風に笑うことが多い。 つられてあたしも笑う。 タツヒコのシャツに顔を寄せると、いつものサンダルウッド。 「もう一回言えよ。」 「ん? 何を?」 「今の。」 「旦那様?」 「うん。」 「旦那様。ふふ、旦那様って言い方、気恥ずかしいね。」 「俺は楽しいよ、奥さん。こっちを向いて、もう一回言ってくれ。」 “旦那様”と言うごとにタツヒコは楽しそうな顔をする。 「今日は何をしても楽しそうだね。旦那様は。」 役所でも、弁護士さんのところでも、指輪を選ぶときも、ずっとご機嫌モードだったタツヒコ。 あたしは行く先々でドキドキしてたのに。 「あたしばっかりアワアワして、ずるくない?」 「そうか?」 タツヒコがあたしの顔を食べ始める。 頬に軽く歯を立ててから、舌と唇で舐め続けた。 「実感わかない。本当にあたしたち結婚したの?」 「そうだよ。もう逃げられないからな。」 「何で逃げるの?」 「お前には前科があるだろう?」 レイ先生の時のこと? 「だってあれは・・・」 「あの時俺がどれだけ焦ったか、わかってないだろう?」 「呆れた?」 「いや、お前を失うかと思って、怖かったよ。」 がぶりとタツヒコがあたしの顎にかじりつく。 「そういえばあの時、どうやってあたしを見つけたの?」 「知りたいのか?」 「隠すの?」
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