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ベットまであとほんの数歩なのに、あたし達はもう歩くこともせずに舌を絡め合う。 触れられた手から伝わってきたタツヒコの熱は、あっという間にあたしに感染した。 自分から差し出す舌。 タベテ。 モット、モット。 タツヒコの手が、唇が優しすぎて、あたしはもどかしくなる。 「もっと。」 「タツヒコ。」 キスしながらタツヒコの首からネクタイを抜きとった。 「春野。」 「ん?」 あたしはシャツのボタンと格闘中。 「今日は何しても、イヤって言うなよ。」 「何するの?」 背中を撫でる掌が熱い。 やっとシャツを剥ぎとれた。 「今考えてる。」 タツヒコは楽しそうだ。 あたしは、もうキスの先が欲しくて、我慢できそうにない。 「タツヒコ、もっと。」 裸のまま、ソファから立ち上がって、男の手を引き奥へ向かう。 タツヒコがカバーを剥いで、ベットに座った。 手招きされて、向き合ってキスをする。 あたしは立ったまま。 腰を掴まれて、タツヒコに跨った。 キスをして、顔を離してあたしを見つめるタツヒコ。 何度も繰り返すうちに、あたしはぼうっとしてくる。 深くて長いキスをしながら、背中にひんやりしたシーツを感じる頃。 部屋の明るさも気にせずに、あたしはタツヒコに絡みついている。 愛する人に抱かれる幸せで、あたしは何度も“タツヒコ”と名前を呼びながら果てた。 髪を梳く指から、体中を掠める唇から、タツヒコの気持ちが伝わるような優しさを感じて、あたしは泣きそうになる。 言葉以外でも、こうやって愛を伝える方法があるのだと、タツヒコは教えてくれた。 「好き、大好き。」 あたしは他の言葉を知らない。 心を込めて伝える。 SEXの最中の言葉なんて、タツヒコには意味のあるものとして聞こえていないかもしれない。 でも、あたしはこんな時でないと、素直になれない。 目を閉じて、唇だけ動かして言葉を紡ぐ。 “好き、タツヒコ。” “アイシテル、タツヒコ。” カラダ中が汗まみれになって、くったりと力が抜けても、あたしは“もうだめ”とは言わなかった。
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