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「あたし、ちゃんとするから。」
「?」
「ちゃんと考えて、直すよ。今日明日ってわけにはいかないけど。」
「何を直すんだ?」
「ん、今まで間違ってたこと。」
「何を間違ってたんだ?」
「えっと、まずはお家賃も払わないでここに居候しているでしょ。」
居候?
今時居候なんて言葉使うか?
「あとは、当たり前みたいに、タイやコウに車出してもらったり。」
1人で出歩かせたくないから、あいつらを付けてるだけだ。
「服とか、靴もバックも、たくさん買ってもらって。時計だってあんな高級なもの。」
その何倍も欲しがる女は沢山いる。
自分の女を飾るものを買っただけのことだ。
「車の修理代も払わなかったし、アイスも食べ放題で、お金払った事ないし。」
ああ、さっき店でも言っていたな。
何で今さら金の話なんだ?
「タツヒコ、もしかして、秋実とのことでお金使ったりした?」
春野は知らなくていい事だ。
俺は言わない。
「やっぱりそうなんだ。」
「春野?」
「今は全部は無理かもしれないけど、とりあえず、貯金してる分の金額は返せるし、あとは働いて返す。それでもいい?」
「待てよ。なんで金を返すなんて言うんだ?」
「だって、おかしいよ。」
おかしいのは春野の方だ。
またなんだか訳のわからないことを考えているんだろう。
「春野、ちょっと待てよ。おかしい事なんてないだろう。」
「俺と春野は付き合っていて、恋人なんだろう?」
「恋人に誕生日のプレゼントをしたり、自分の好みの服を用意するのは、おかしいのか?」
「俺は春野が1人で部屋で泣いているのが嫌だったんだよ。だからヨウジの反対も振り切って、無理やりここに連れてきたんだ。」
「居候じゃなくて、恋人だから一緒に暮らしてるだけだ。春野がいないと、俺がダメなんだよ。」
「俺に作ってくれるメシの材料は、春野が買ってきてくれるだろう?俺の代わりにタイやコウの世話をしてるのも。」
「俺はそれに対して、金を払えばいいのか?」
春野の上唇がとがる。
「あたしはお金が欲しくてやってるんじゃないよ。自分がやりたいだけなのに。」
「俺だってそうだ。時間を確かめる度に、俺のことを思い出してほしいから、あの時計にしたんだ。」
「頑張ってるご褒美だなんて言ったけど、あれって、誕生日だったからでしょ?ケーキも用意してくれて。」
春野が思い出し笑いをする。
コロコロ変わる表情がかわいい。
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