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「タツヒコ?」
「春野、“Yes”だけ言えばいいから。他の言葉は受け付けないから。」
「え?」
「俺を世界一幸せな男にしてくれないのか?」
見る見るうちに春野の瞳に溜まる涙。
大きく開いた眼で、俺を見ている。
「あたしでいいの?」
ああ、本当に春野はわかっていない。
俺は自分の胸に、春野の手を当てる。
「春野がいい。他はいらない。俺をこんな気持ちにさせるのは、お前だけだよ。」
「タツヒコ。」
「春野、返事をくれないのか?」
俺の胸の響きは春野の手にも伝わっているだろう。
“Yes”以外はいらないと言いながら、俺の心は不安でいっぱいになる。
ひと言だけ言ってくれ。
願いを込めて、春野を見た。
「はい。」
春野の声が震えている。
「結婚してください、タツヒコさん。愛しています。」
“愛しています。”
“結婚してください。”
“タツヒコさん。”
目の前が霞んで、春野の輪郭があやふやになる。
抱き締めた春野の髪に、唇を押し付けて、こみ上げる嗚咽を留めた。
湧き上がる幸福感に、俺は言葉も出ない。
願いどおりに、春野は俺を世界一幸せな男にしてくれた。
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