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たくさんの飾りや短冊が吊り下げられ色鮮やかな笹の葉。ハロルドはイタズラを思い付いた子供のような顔でニヤリと笑った。
「これ、たしか、願い事を書くための物だよね?あいなとルイスのもどこかにあるんじゃない?願い事と同時に名前も書くのが普通らしいし。探してみようよ」
「お前、悪趣味だぞ。あいつらにもプライバシーってものがっ……」
「こんなところに堂々と公開されてる笹の葉だよ?短冊書いた人も、誰かに見られるかもしれないことは了承済みだよ」
「そっ、それはそうだが、しかしだな…!」
「シャルは気にならないの?あいなとルイスが何を願ったのか」
「気にならなくはないが、だからって人の願いを勝手に見るなど……。ここに気配があるからって短冊を書いたとも限らないし」
「書かなかったとも言い切れないよー?」
シャルの言葉を聞き流し、ハロルドは楽しげに目的の短冊を探す。あいなとルイスの短冊が見つかるまでの間、他の客達が書いた願い事にもザッと目を通した。
「試合に勝ちたいとか試験に合格したいって書いてる人もいるけど、やっぱり恋に関する願い事が多いね。ここ、女性のお客さんが多いし」
「お前っ、他の人の願い事まで見たのか!?」
「だって、興味深いんだもの。これも僕にとっては修行のうちだよ。あ!あいなの短冊発見!」
「何!?本当に書いてるとは…!」
シャルは冷や汗をかいた。胸が激しく鼓動する。
(ルイスと結婚できますようにとか書いてあったらどうする!?破壊力ありすぎるぞ、それは……)
嫌な汗を流すシャルの横で、ハロルドは楽しげにあいなの短冊に書いてあることを読み上げた。
「いつか大好きな人と結婚して幸せな家庭を作れますように。神蔵あいな」
「大好きな人…?」
「良かったね。ルイスに関する願い事じゃなくて」
ホッとしたものの、シャルは腑(ふ)に落ちなかった。
「あいつが大好きなのはルイスじゃないのか?なのになぜそう書かない?俺と別れて迷いなくルイスを選んだんじゃないのか……?」
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