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ハロルドの案内でたどり着いたのは、住宅街の近くに位置する河原だった。ショッピングモールを出てシャルがそこへ着く頃には、茜色の空が河原の水を反射し、さきほどよりいくらか涼しい風が吹いていた。大きな河が、夕焼け色の空を受け止めるように長く伸びている。
一人河原に座るルイスの元に、二人は近付いた。
「ルイス」
「シャル様。ハロルド様もご一緒とは……」
「帰りが遅いと思ったらこんなところに居たのか」
「申し訳ございません……。その傷はどうされたのです?」
シャルの頬や首筋からのぞく傷を見て、ルイスは怪訝な顔をした。
「平気だ。事情は城で話す」
「……少しそのままでお願いします」
「すまない」
ルイスの治癒魔法はやはり完璧で、シャルの傷はすぐに治った。
ルイスの両脇に座り、ハロルドとシャルも河原を眺めた。
「ルイス。こんな所で何をしてたんだ?」
「気持ちの整理をしていました。それからでないと城には戻れそうになかったので……」
「気持ちの整理、か。悪いと思ったが、笹の葉に吊るされたお前達の短冊、見た」
「そうでしたか。かまいませんよ。あいな様に見られなければそれで」
驚きもせず冷静に語るルイスに、シャルは顔をこわばらせた。
「あの願い事は本心か?お前はあいなを諦めるというのか?」
「……」
「本当にそれでいいのか?」
「いいもなにも、あなたは初めからあいな様を諦める気などなかったはずです。あいな様をお迎えにいらっしゃったのでしょう?ここから先はシャル様の出番です」
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