10 永久(とわ)の誓い

64/134
前へ
/669ページ
次へ
 ハロルドの案内でたどり着いたのは、住宅街の近くに位置する河原だった。ショッピングモールを出てシャルがそこへ着く頃には、茜色の空が河原の水を反射し、さきほどよりいくらか涼しい風が吹いていた。大きな河が、夕焼け色の空を受け止めるように長く伸びている。  一人河原に座るルイスの元に、二人は近付いた。 「ルイス」 「シャル様。ハロルド様もご一緒とは……」 「帰りが遅いと思ったらこんなところに居たのか」 「申し訳ございません……。その傷はどうされたのです?」  シャルの頬や首筋からのぞく傷を見て、ルイスは怪訝な顔をした。 「平気だ。事情は城で話す」 「……少しそのままでお願いします」 「すまない」  ルイスの治癒魔法はやはり完璧で、シャルの傷はすぐに治った。  ルイスの両脇に座り、ハロルドとシャルも河原を眺めた。 「ルイス。こんな所で何をしてたんだ?」 「気持ちの整理をしていました。それからでないと城には戻れそうになかったので……」 「気持ちの整理、か。悪いと思ったが、笹の葉に吊るされたお前達の短冊、見た」 「そうでしたか。かまいませんよ。あいな様に見られなければそれで」  驚きもせず冷静に語るルイスに、シャルは顔をこわばらせた。 「あの願い事は本心か?お前はあいなを諦めるというのか?」 「……」 「本当にそれでいいのか?」 「いいもなにも、あなたは初めからあいな様を諦める気などなかったはずです。あいな様をお迎えにいらっしゃったのでしょう?ここから先はシャル様の出番です」
/669ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加