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ルイスとハロルドはしばし無言だった。シャルの想いの強さが感じられる。
シャルの心持ちには感動したが、あいなの未来を考えるとハロルドは素直にうなずけないでいた。
「君の気持ちは素敵だと思う。でも、このままじゃあいなは……。今も、あいなの星は何も映してくれない……。何度も占ってるのに……」
「シャル様ならそうおっしゃると思っていました。そこでひとつ考えがあります」
涙混じりなハロルドの言葉に重ね、ルイスはよく通る声で言った。
「エトリアの指輪の輝きを甦らせそれをあいな様の指に再びはめることが出来れば、指輪の魔力に護られ、あいな様の病は完治させられるかもしれません」
「確実ではないのか?」
「はい。あくまで仮説です。前例のない事態ですから……。ただ、何もせずに諦めるよりはずっと建設的です」
「そうだな。エトリアの指輪があいなの病を浄化してくれる可能性があるのなら……!」
希望が見え、シャルは生き生きと目を輝かせた。
「どうやって指輪を元に戻すんだ?」
「移魂の儀を執り行います」
「いこんのぎ……?」
初めて耳にする言葉に、シャルをはじめハロルドも首をかしげた。
「魔法や儀式関連のことは昔全て習ったはずだが、初めて聞くぞ」
「僕も。バロニクス帝国でも聞いたことのない儀式だよ」
「これはロールシャイン王国のごく一部の魔法使いにだけ伝わる話なのです。禁断の魔法『リバイバル』を使って行う儀式で、危険も伴うため一部の者にしか受け継がれてこなかったのです。ハロルド様を信用して話しました。先祖エトリア様が編み出した術式と言われていて、幸い私も、移魂の儀を執り行う資格を得ています」
「そんなすごいことを今まで黙っていたのか、お前は……」
「極秘事項ですから。今は緊急事態ゆえ話すべきだと判断しました」
「そうか……」
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