10 永久(とわ)の誓い

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 両親の秘密を思わぬ形で知ってしまったあいなは、好物ばかりが並ぶ食卓についても心ここにあらずといった状態だった。 (お父さんとお母さん……。本当は私のことどう思ってるの?)  空腹感はあるのに食は進まず、心の中を見せないよう終始笑顔を作るだけ。そんなことにも疲れてしまい、家族がまだ食べている中、あいなは一人夕食の時間を終わらせた。 「ごちそうさま。おいしかった。ありがとう」 「もういいの?まだこんなに残ってるわよ、エビフライ」 「大丈夫。なんか眠くて。久しぶりに帰ってきたから気が抜けたのかも。残りは龍河にあげる」  龍河は眉を寄せ、立ち上がったあいなを見上げる。 「熱でもある?エビフライの日はいつも、俺の分奪ってでもたくさん食べようとするクセに」 「ははは。そうだね。そんなことして今までごめんね」  ぎこちなく返し、怪訝そうにこちらを見てくる龍河の視線に気付かないフリで食器を片付けると、あいなは二階の自室に向かった。眠いなんてウソ。本当は、どんな顔であの場にいたらいいのか分からなかったのである。 「なんか、よく知る家なのに違う場所に見える……」  自室に入ると部屋の扉を閉め、電気もつけずベッドに寝そべる。室内が暗いせいでカーテンを開いた窓から夜空がよく見える。肌という境界線を壊し闇が体内に入ってくるようで恐ろしい。あいなは胎児のように身を縮こまらせた。 「恐い……。なにこれ」
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