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「俺がもしこの家の子供じゃなかったら、姉ちゃんは他人扱いしてくるの?」
「そんなっ、絶対ないよ!龍河は龍河!何があっても弟に変わりないっ」
あいなは素直に答えていた。
「俺も同じ」
「え?」
「いちいち言わせないでくれる?」
そっぽを向いて、龍河は照れ隠しに本棚からギャグマンガを取り出す。あいなお気に入りの一冊だった。
昔と違い可愛らしさのかけらもないが、龍河の優しさは子供の頃と変わらない。あいなはホッとした。
「そうだよね。血のつながりなんて関係ないよね」
「そうだよ。マリッジブルーなのか何なのか知らないけど、そういう妄想やめてくれる?反応に困るから」
「うん、ごめん。私、どうかしてた」
相変わらずそっけない龍河の言葉も、今のあいなには元気の素に感じられた。
(そうだよ。血のつながりがなくたって私はこの家の子供なんだ。今こんなに素敵な家族と暮らしてるんだから過去なんてどうだっていい。もう、悪い風に考えるのはやめよう!)
そこへ、ノックの音が響いた。あいなの体調を心配した麻子と勲がやってきたらしい。
「あいな。大丈夫?」
「毛布なんかかぶって暑くないのか?」
勲はさきほどの龍河と同じことを言いエアコンのスイッチをつけようとしたが、龍河がそれを止めた。
「姉ちゃん寒いんだって」
「風邪かしら。さっきもあまり食べてなかったもんね……。念のためにこれを飲んでおきなさい」
麻子は、コップに入った手作りフルーツジュースをあいなに渡した。昔からよく知る優しい味。あいなはゆっくりそれを喉に流し込み、再びベッドに横たわった。
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