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どれだけ眠っていたのだろう。あいなが目を覚ますと、そこは見知らぬ場所だった。辺り一面薄紫色の、何もない空間。
「ここは……?」
自分は今、自室のベッドで眠っていたはず。
「夢の中かな?」
「夢じゃない。ここはあなたの心の世界よ」
疑問に答えたのは女性の声だった。あいなが声の方を向くと、さきほどまで誰も居なかったはずの場所に一人の美しい女性が立っていた。
「あなたは…!?」
女性を見てあいなは目を見開く。彼女の容姿がシャルにそっくりだったからだ。エメラルドグリーンの瞳。ゆるい天然パーマのブロンドヘアは腰まで艶(つや)やかに伸びている。
「驚かせてしまってごめんなさい。私はエトリア。エトリア=ペルヴィンカ=カスティと申します」
「エトリア様!?もしかして、指輪の……?」
「はい。私はロールシャイン王国の初代女王。エトリアの指輪を作ったのは他でもない私です」
「そんな!どうして、エトリア様が……!?」
ここはあいなの心の世界。遠い時代に亡くなったエトリアがなぜそんな場所に姿を現すのか、あいなには分からなかった。
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