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「独りは楽よ」
冷ややかで威圧的な声があいなの耳を貫いた。エトリアと同じ声質なのに、そこににじむ感情が違うせいで全く別の人の声に聞こえる。
「あなたは……!」
「その様子だと、エトリアに会ったみたいね」
「エスペランサさん、なんですね…?」
双子の姉妹というだけあり、エスペランサはエトリアと全く同じ容姿をした女性だった。しかし、その表情はエトリアとはだいぶ違い陰がある。何もかもを諦めたような冷えた目でエスペランサはあいなを見ていた。
「神蔵あいな。気分はいかが?」
「……あなたが、エスペランサさん」
「覚えてくれて光栄よ」
後ずさり、あいなは警戒心に満ちた目でエスペランサを見つめた。
「どうして私の魂を抜いたりしたんですか?この通り、私は何の力もないただの高校生です」
「あなたのためよ」
「私のため?」
「魂を抜かれる前よりうんと気分が穏やかなはずよ」
「それはっ……」
「ほとんどの人は死という現象に対して悪い印象を持ってるけど、私はそうは思わない。死は解放。死は再生。終わりの始まりは無。死をもって人は全ての苦しみから解放される。痛みも、愛するつらさも、嫌われる悲しみも、自責の念も、感じずに済むのだから」
「……」
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