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あいなはそっと、エスペランサに歩み寄った。
「私でいいなら話を聞きます。つらいことや悲しいこと、一緒に乗り越えませんか?」
「何を……!?」
「今、見えるんです。あなたの心が」
「……!」
痛い。切ない。苦しい。愛しい。恋愛がもたらす様々な感情を、エスペランサの想いを、あいなは感じ取っていた。
エスペランサは、かつてある男性に恋をしていた。気立てが良く利口で美しいと才色兼備な妹エトリアに劣等感を抱くエスペランサに唯一理解を示し励ましてくれたのがその男性だったのだが、彼はエトリアに恋をし、彼女の最初の夫になってしまった。
「他の全てのことで負けるのはかまわない、彼のことだけはエトリアに譲りたくなかった!」
「……分かります。好きな人に振り向かれなかった時の苦しみ。寂しさ。私も、好きな人が親友を好きになるってことしょっちゅうだったから」
「……そう。私は見放されたのよ。妹からも、世界からも、好きな人からも」
ロールシャイン王国の第二女王になりたい、エスペランサはそう申し出たのに、エトリアはそれを許さなかった。
「エトリアに比べて魔力が未熟だから……。それだけの理由で、私はロールシャイン王国の統治者として認められなかった!愛する男性との未来を諦めなくてはならなくなった!」
そのような心持ちで魔女村を治めていても、うまくはいかなかった。村は繁栄するどころかエスペランサが治める前より荒れていく。
「そんな時、異世界から来たという魔法使いに出会った。彼は、私に媚薬の調合を教えてくれた。惚れ薬とも言われているわね。それを想い人に飲ませれば、永遠にかたい絆で結ばれるという効果がある。エトリアの夫になったあの人を諦められなくて、私はその薬を作ったの。藁(わら)にもすがる思いでね……」
「惚れ薬……」
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