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「私はエトリアと同じ血を持っている。エトリアの指輪を通して、あなたとシャルの関係を感じていた。子孫がそういう恋愛に出会えたことが、自分のことのように幸せだった。それなのに……!」
穏やかだった表情は一変、エスペランサは恨み深い声音で言った。
「シャルはあなたを突き放した……!」
「エスペランサさん……」
「それに絶望した私は、愛を信じ指示する者達に復讐すると決めた!」
「うっ……!」
エスペランサがあいなに向かって手のひらを翳(かざ)すと、あいなの意識は一瞬で無くなった。
「神蔵あいな。あなたには秘められた力がある。でもそれは死をもって発揮される特殊な能力なの。私ならそれを有効に利用できる。この世を変えるのよ!私の望んだ世界へとね…!」
もうみじめな思いはしたくない。欠点があっても好きな人に振り向かれ愛される世界を、エスペランサは作りたかった。
生きている時には出来なかったこと。今、あいなが持つ潜在能力を駆使する時が来たのだ。
催眠剤の効果であいなの心が揺らいだ時、エトリアの指輪が彼女の指から外された。それは、エスペランサにとってまたとない好機だったのである。
「常に指輪の魔力に護られていた神蔵あいなは無防備になり、その隙間にこうして私の意思を滑り込ませることが出来た…!」
エトリアの指輪が日に日に黒ずんでいったのは、エスペランサの邪悪な念によるものだった。それを、シャル達はまだ知らない――。
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