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翌日。7月7日の朝になっても、シャルは移魂の儀を受け入れられないでいた。昨日、地球から城に戻ってきて以来、ずっと一人で書庫にこもっている。
手当たり次第にまじない書を開き、あいなの命が助かるようなものを片っ端から試した。それでダメなら、他の魔法書を手に取り、リバイバルを使わなくていい方法を探した。
ルイスにあいなを渡す気はないし、彼女への気持ちは本物だ。しかし、だからといってルイスを犠牲にあいなを助けるというのは間違っていると思う。
「リバイバル……。ルイスの言う通り、もう、それしか方法はないのか……。俺は、愛する女を護ることすら出来ないのか!?」
両手で無造作に髪を乱し、シャルは頭を抱えた。まだ考えたいのに、一睡もしていないせいで脳が思うように働かない。もうすぐ朝が来て、そうなれば自分は誕生日パーティーに出なくてはならない。時間はない。気は焦るばかりだった。
ルイスの覚悟はそうとうなものらしく、彼はすでに儀式の間で一人その時を待っていた。
「いつでも移魂の儀を執(と)り行えるよう、万全の準備をしておきます」
そう言い残して。
一方ハロルドは、カスティタ城の客室であいなのことを占い続けている。
「そのうち何事もなかったかのようにパッとあいなの未来が見えるようになるかもしれないから」
そう、希望的な一言と共に。
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