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「ここから先は自分で考えろ、そういうことですね、エトリア様……」
指輪の消えた左手を見つめ、シャルは決意した。
「ルイスが魔物に襲われたあの時から、俺は自分の手で誰かを傷付けることを恐れていた」
恐怖心を克服し、攻撃魔法を使う。そうすることであいなを救えるのなら、立ち止まってなどいられない。
何が起きても動揺しない。心身共に強くなる。シャルが決意したその時、ハロルドが勢い良く書庫に飛び込んで来た。
「シャル!今すぐ移魂の儀を許して!お願いだから!」
「それはしないと言ったはずだ」
「あいなの気配(オーラ)が消えたんだよ……!すぐにエトリアの指輪を修復しなきゃ!それであいなが助かるかもしれないのなら…!ルイスに伝えてくる!」
「待て、ハロルド!」
シャルはハロルドの腕を掴んで止めようとしたが、ハロルドはそれを申し訳なさげに離して強く言った。
「君と比べられないくらい、あいなは大切な人なんだ。彼女が居たから今の僕がある。だから、シャルが止めても僕は行くよ」
シャルが止めるのも聞かず、ハロルドは儀式の間に駆けた。
「ハロルド!」
あれほどまでに強い意思を持ったハロルドを、シャルは初めて見た。
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