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「さすが、ロールシャイン王国の人間が選んだ専属執事。じつに優秀ね」
「あなたは何者です?あいな様の体を乗っ取って何を企んでいるのですか?」
「私はエスペランサ。あなた達の言う『アンコンシアンス・マレディクション』を世の中に蔓延(まんえん)させるため、神蔵あいなの体と魂を利用させてもらう」
「エスペランサ。かつて魔女村を治めていたが大罪を犯し罰せられ命を終えた古(いにしえ)の魔法使い。そうでしたか、あなたが全ての元凶だったのですね。あいな様をあなたの好きにはさせません……!」
「彼女は孤独を選んだ。私の理想を理解してくれたのよ」
「そんなはずがありません。彼女は生きることを望んでいるはずです」
「話が通じないのなら仕方ないわね。邪魔者には消えてもらうとするわ」
あいなの体に乗り移ったエスペランサは、あいなの中に眠る潜在能力を使い魔力を増幅させ、ルイスに向かって次々と魔法攻撃をしかけた。シャルとハロルドを護りながら、ルイスは俊敏(しゅんびん)に応戦する。壁を伝い、天井を蹴り上げ、二人は戦った。
炎の雨が降り、水の壁が水蒸気を作る。儀式の間は壁から順に崩壊し、水蒸気のせいで辺りは瞬く間に暑くなった。あいなの姿をしたエスペランサも全身に汗を流している。
「高い潜在能力を持っているのにこれくらいの魔法で疲弊するなんて、無魔力の人間の肉体は不便ね」
エスペランサは苦しげにそうつぶやいた。魔力を持たないあいなの肉体で魔法を使うと、その負担に耐えきれず肉体は損傷してしまう。シャルやルイス、秋葉のように魔力強化の訓練を受けていれば別だが、あいなはそのような訓練を全く受けたことがない。
「今すぐ攻撃をやめて下さい!でないとあいな様の体が持ちません!」
「いいのよ。神蔵あいなは心の底で死を受け入れたんだから」
「あなたが洗脳したのでしょう!?」
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