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ルイスの忠告を無視し、エスペランサは攻撃を続行する。ルイスは相手の動きを封じる魔法を使ったが、今のエスペランサには効かず無駄な抵抗となった。どちらも引かない激しい攻防戦が続く中、それを見ていたシャルとハロルドは魔女村での騒動を思い出していた。
「エスペランサさんのお墓から漂っていた黒い靄(もや)と同じ気配(オーラ)を感じる……。彼女、世の中を強く恨んでいるみたいだよ」
「エスペランサを倒せば、魔女村の異変は収まりあいなは救われるのか!?それだけじゃなく、アンコンシアンス・マレディクションという難病も世界から消える…!」
「シャル、何を言って……」
「さっき、指輪の魔力を通してエトリア様と話したんだ。あいなを助けるために、俺はエスペランサの魂をこの手で成仏させる!」
シャルはグッと強く左手を握りしめる。ハロルドは不安げな面持ちでシャルを見た。
「でも、君は……」
「ああ。俺は他人を傷付ける行為が嫌いだ。だから魔法攻撃もまともに使えない」
シャルは言い、おもむろな足取りで前へ一歩進み出た。目前ではルイスとエスペランサの激しい戦いが続いており、魔法による爆発音や武器のぶつかる金属音がしきりに響いている。崩壊した壁から砂煙まで舞う始末だ。
「ハロルド。お前の罪を知り赦(ゆる)すと決めた時、俺は自分の弱さともっと向き合うべきだったんだ。いつまでもルイスにばかり甘えていられない」
今まで使うことのなかった攻撃魔法。シャルは両手を前方に向けて広げ、強く願った。
「あいなを助けたい。元の元気なあいなに戻ってほしい……!頼む。成功してくれ!」
シャルの手のひらから放たれた桃色の光線は不安定な線を描き、空中戦に臨むルイスの真横を走ると、最終的にはエスペランサもといあいなの心臓目掛けて鋭く突き刺さった。
「……!!」
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