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あいなはエスペランサの想いに打ち勝てなかった。言葉の上では強く言い返していたけれど、あいなはエスペランサ以上に深い心の傷を負っていた。
これまでの生活でその傷は埋もれて見えなくなっていたが、エスペランサの強い情念に煽られ、過去を剥き出しにされたのである。
(今、私は幸せだけど、それでも、私を産んでくれたママと一緒に居たかった。離れたくなんかなかった。ママがいなくて、ずっと悲しかった)
シャルの魔法でエスペランサの魂を貫いた時、同時にあいなの肉体も助かるはずだったのだが、シャルの魔法に込められた無限の愛を、あいなは否定した。何をしても胸の傷が塞がらず死を迎えることになってしまったのはそのためだ。
(今までの恋が片想いで済んで、本当はホッとしてた。恋する相手に素の自分を受け入れられたいと思いながら、そんな相手いるわけないって感じてたし。シャルからプロポーズされた時、嬉しかったけど恐かった。ママのように、シャルも私を嫌になって見捨てるかもしれないって思ってしまって……)
そんな時、ルイスからアプローチされて、あいなはシャルから逃げるための言い訳を作った。
(ルイスのことは好きだけど、友達としてだった)
ルイスがエルザとの結婚を決めた時、なぜあんなに動揺し彼の前で涙を流してしまったのか。どうして二人の結婚を祝う気持ちになれなかったのか――。あの時には分からなかったが、今ならよく分かる。
(私はルイスのことが好きだった。ルイスと友達になりたい、お互いを支え合う関係になりたいと強く思ってた。そんなルイスに、本当に幸せになってほしかった。ルイスはいつも私やシャルのことばかり優先して自分のことは後回しだから……)
そんなルイスが、恋愛感情以外の理由でエルザとの結婚を決めたのが悲しかったのだ。
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