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(私のことを好きって言った後でエルザさんと結婚するなんて、ルイスは絶対無理してると思った。余計な口出しかもしれない、ルイスの気持ちに応えてあげられなかった私がこんなこと言うのはダメなのかもしれない、でも、ルイスには心から好きって思う人と幸せになってほしかった。妥協や他人の幸せのためじゃなく、自分が本当に納得できる相手を選んで、結婚はそれから決めてほしかった)
あいなの顔から、どんどん血の気が無くなっていく。
意識が無くなる間際まで、あいなは何度も心の中で「ごめんね」を繰り返した。
(不器用で、無神経で、鈍感で、ごめんね。皆とすごした時間は、ずっと宝物だよ――)
「あいな!俺達は夫婦だ。何があっても俺はお前のそばにいる!!だから目を開けてくれ……。お願いだ…!」
あいなに触れているルイスとハロルドを退(の)けてシャルは彼女の上体を抱き起こし、強く抱きしめた。あいなの胸から流れる血が、シャルの着ていた衣装に染み写る。
ルイスはあいなとお揃いのネックレスを握りしめ、ハロルドは静かに涙を流した。あいなの胸の傷は不思議な力で開かれたままになっているので、医術では治療不可能だと誰もが理解していた。
シャルはあいなを強く抱きしめたまま、その存在が消えないよう強く祈る。
「俺の持ってるもの、全て失くしてもいい。あいなのことだけは、俺から奪わないでくれ!」
今は亡きエスペランサに向けた言葉だった。
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