10 永久(とわ)の誓い

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 シャルの疑問はもっともだった。エルザとは婚約話が成立しなかった経緯がある。  ルイスの財産をエルザの一族に譲渡し両家の関係は穏やかになったが、とはいえ、他者から見たらシャルの誕生日パーティーに出席するエルザは見世物以外のなにものでもない。  面白おかしく噂を立てられることは必至。シャルはそれを心配した。 「無理して参加することはないぞ。俺もこんな状態だから出られるかどうか分からないし……」 「私は大丈夫です。もとより人目は気にしていませんから」  エルザは、シャルの耳元で彼にだけ聞こえる声で説明する。 「本日、カロス様に招待を受けました。近頃ルイスが思い詰めた様子なので心配だから顔を見に来てほしいとお願いされたのです」 「国王様がなぜそんなことを…?」  エルザはルイスに想いを寄せている。仮にカロスがそれを知っているとはいえ、こうしてパーティーに招待してまでエルザを巻き込む理由がシャルには分からなかった。  もっと詳しく聞きたい所だが、今はそれ以上話している余裕がない。 「シャル、話は後にしてあいなさんのことを何とかしなさいよ!助ける手段があるんでしょう?」  クロエが近寄ってきて、自分のドレスが汚れるのも気にせず血まみれなあいなの肩を抱いた。反対側からヴィクトリアがそれを手伝う。 「シャル。ここは俺達に任せていい。彼女は医務室に運ぶ」 「悪いが、任せる!ありがとう!」  シャルが儀式の間を出ると、ルイスとハロルドもそれに続いた。 「ご一緒させてください。私も多少魔法を使えるので、何かお役に立てたらと思うのです。お願いします」  エルザはルイスを見つめ、三人に頭を下げる。シャルとルイスは少しためらったが、ハロルドは快くうなずきエルザに手招きをした。 「エルザ姫も一緒に行こ!助っ人は多い方が助かるし」 「ありがとうございます!」
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