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「……」
しばし、訪れる沈黙。
へ……変な女と思われたかな?
それとも、こんな時間まで残業しなきゃいけないくらい、使えない社員って思われたかな?
何かどう転んでも、悪い印象しか浮かばないんだけど……。
全く本題にもいけてないのに、自己嫌悪で、すでに泣きそうな私。
『じゃあ……玉砕してきな』
狼狽える心の中で、菜々美の鋭い言葉を反芻した。
(いや、これは、もう……。玉砕以前の問題だよ……)
そんな心が壊れかけた私の耳に、また甘く低い声が響く。
「このグラフ、間違っていますね」
……え?
思わぬ一言に、私は顔を上げた。
「ここです」
そう言って、東条さんは、立ち上げたままの私のパソコンの画面を折り曲げた人差し指で、コンコンと叩く。
私は、東条さんと、より近づいてしまうことも忘れて、思わず画面に顔を寄せた。
「この資料と比較してください。数値が、おかしいですね?」
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