488人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
東条さんの指が、今度は、先程のグラフの隣に表示されている資料を指す。
「あっ……ほんとですね!」
指摘通り、比較してみると確かに間違っていた。
「す、すみません……!すぐに直します!」
残業の口実とはいえ、ちゃんと作ってたはずなのに。
よりによって、東条さんに間違いを指摘されるとか。
私は、どんだけ馬鹿なの……!
またしても、自己嫌悪に押し潰されそうになりながら、私が、パソコンのマウスに手を伸ばしかけると。
私の手が掴むより速く、東条さんの指先がマウスに触れた。
「君が直すと、また時間が掛かりそうだ」
そう言って、東条さんは、マウスを素早く動かした後、パソコンのキーボードを私の倍の速さで、打ち込み始める。
しなやかに動く東条さんの指先が、私の作った画面を綺麗に塗り替えていく。
その仕事の速さ、的確さに、心打たれながらも。
私は。
ちょっとだけ、不謹慎な妄想をしてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!