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あの長い指先で、触れられたら……。
どんなだろうって……。
「これで、大丈夫でしょう」
東条さんの声に、不埒な妄想を一気に頭の外に追いやると、私はパソコンの画面を確認した。
「あ……は、はい、直ってます!……ありがとうございました!」
私は、過去にないくらい深くお辞儀をした。
「では、これで解決ですね。もう、30分程で日が変わってしまいます。君は、帰るように」
「え……あ、あの……っ」
マズイ。
このままだと、本当に、玉砕すらできないまま終わっちゃう………。
例え、無様な爪跡でも。
せっかく、こんな風に会えたんだもん。
精一杯、頑張って砕け散りたい……!
今にも、フロアの入り口に行ってしまいそうな東条さんに向かって、私は喉の奧から声を振り絞った。
「あ、あ……あの……!」
至近距離にしては、デカ過ぎる声に、東条さんが再び私に視線を向ける。
「はい」
異様なテンションに包まれた私とは真逆の、落ち着き払った声で応じる東条さん。
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