1piece チョコレートな夜の始まり

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チョコレートと一緒に……。 「私が、こんなに遅くまで残ったのは、プレゼンの資料作りのためだけじゃないんです……」 私の振り絞るような告白に、東条さんは静かに向き合ってくれる。 私は少し屈むと、バッグの中から、ラッピングした小箱を出した。 朝から、潰れないように、大切に大切にしまっていたチョコレート。 「これを……受け取ってください」 私は震える手で、チョコの箱を目の前の東条さんに差し出す。 そして、一度だけ深呼吸すると、私は言った。 「好きです、東条さん!いえ……」 なけなしの勇気を奮い立たせて、東条さんの瞳を真っ直ぐ見つめる。 「東条社長」 そう。 彼は、この会社のトップ。 単なる平社員の私なんかとは、釣り合うはずもない。 でも、それでも……。 あの入社式の日。 大勢の人間の前でも、全く臆することなく、圧倒的なカリスマを持って、私達新入社員に、祝辞を述べてくれた貴方の姿が。 あの日から、色褪せず、ずっとずっと。 心から、離れないんです……。
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