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突然、差し出されたチョコレートに、東条社長の瞳が少しだけ揺らいだ。
「……」
また訪れる、少しの間の沈黙。
普段食べるばっかりで、料理もお菓子も全然作らなかった私が、両手で数えて、まだ足りないくらいの失敗を重ねて、やっと完成した手作りチョコ。
勿論、東条社長はそんなこと知らないし、知ったからといって、私の気持ちに応えなきゃいけない義務もない。
振られて当たり前の、勝算ゼロの告白……。
例えば、つき合うとか、そんなことは全く考えてない。
でも、せめて、生まれて始めて作ったこのチョコレートだけは受け取って欲しいよ……。
だけど、次の瞬間。
東条社長のくれた答えは、私にとって、最悪の答えだった。
「申し訳ありませんが……甘いものは、駄目なんです」
……私のバレンタインは終わった。
気持ちを突っ返されるなら、まだいい。
でも、チョコすら受け取ってもらえなかった。
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