1piece チョコレートな夜の始まり

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「貴女が、食べさせてくれるなら……食べますよ?そのチョコレート」 (……えっ?) 彼の不可解な言葉に、頭が混乱した。 そんな私を煽るように、さらに重なる社長の言葉。 「食べて欲しいんですよね?私に」 そう言うと、彼は、重ねている私の手をきゅっと握った。 その薄い唇は、自信を滲ませた微笑に彩られている。 (ああ……この人は……) 私が、自分に絶体逆らわないって……分かってるんだ……。 私の脳裏に、入社式の時の社長が蘇る。 弱冠29歳にして、会社のトップに就任している東条社長。 180センチある、すらりとした長身。 落ち着き払った容貌。 彼が、新入社員達に祝辞を述べるために、マイクの前に立った時。 私を含む新入社員全員が、彼の持つ空気に圧倒された。 世の中には、二種類の人間がいる。 一つは、力のある人間に従属するタイプ。 もう一つは……誰の下にも従属せず、人を支配するタイプ。
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