488人が本棚に入れています
本棚に追加
「貴女が、食べさせてくれるなら……食べますよ?そのチョコレート」
(……えっ?)
彼の不可解な言葉に、頭が混乱した。
そんな私を煽るように、さらに重なる社長の言葉。
「食べて欲しいんですよね?私に」
そう言うと、彼は、重ねている私の手をきゅっと握った。
その薄い唇は、自信を滲ませた微笑に彩られている。
(ああ……この人は……)
私が、自分に絶体逆らわないって……分かってるんだ……。
私の脳裏に、入社式の時の社長が蘇る。
弱冠29歳にして、会社のトップに就任している東条社長。
180センチある、すらりとした長身。
落ち着き払った容貌。
彼が、新入社員達に祝辞を述べるために、マイクの前に立った時。
私を含む新入社員全員が、彼の持つ空気に圧倒された。
世の中には、二種類の人間がいる。
一つは、力のある人間に従属するタイプ。
もう一つは……誰の下にも従属せず、人を支配するタイプ。
最初のコメントを投稿しよう!