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リボンを解き終わって、包装紙を開くと、中から現れる赤い箱。
その箱の蓋をそっと開けた。
昨日の夜詰めたチョコレート達が、そのままの形で並んでいる。
私は、10個あるチョコレートのうちの一つを指先で挟んだ。
そして、東条社長の方に向き直る。
「し、し、……失礼します……っ!」
油断すると意識が飛んじゃいそうな中、テンパりながら声を絞り出すと、私は、チョコレートを挟んだ震える指先を彼に近づけていった。
そんな私を視線を逸らすことなく、真っ直ぐ見つめてくる社長。
ゆっくりと近づいてゆく、彼の顔は。
遠目で見ていた時以上に、端正で。
こんな恥ずかしい状況なのに、まじまじと見てしまう……。
すらりとしながらも、肩幅が広い、逞しい体つき。
深い闇色の、切れ長な瞳。
いつもは整えられた黒髪が、この時間になって、乱れて額にかかっているのが、どこか艶っぽくて。
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