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どうしようもなく、惹き付けられる……。
少しだけ屈みながら、私の指先が、社長の顔の前まで近づいた時。
不意に、彼の左手が伸びてきて、私の手首を掴んだ。
「あっ……!」
思わず、声が漏れてしまう。
そんな混乱の渦の中にいる私とは正反対の、落ち着き払った東条社長の声が響いた。
「それじゃ、つまらない」
……えっ?
……つまらないって、どういう……?
思考を掻き回されっぱなしの私の手首をいったん離すと、彼は、私の指先に挟んであるチョコレートを抜き取った。
そして……。
驚きで、わずかに開いていた私の唇に、社長の長い指先が伸びてきて……。
チョコレートが、口の中に少しだけ押し込まれる……。
「そのまま、食べさせて」
くすりと妖しく微笑んだ社長が、言う。
(そのままって……)
口で……って、こと……?
もともと激しかった動悸が、さらに加速して、急に突きつけられた行為に、沸き上がる羞恥で、顔が焼けるように熱くなった。
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