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「……っ」
何か言おうと思っても、口に挟まれたチョコが邪魔して喋れない。
「あと、7分」
頭の片隅で、今の状況を整理しようとしてみても。
カウントダウンに急かされて、全然整理できそうにない……。
(ああ、何か、もう……っ)
ワケ分かんなくなってきちゃった……。
憧れの社長に、手作りチョコ渡して、きちんと失恋するはずが………。
嬉しさと恥ずかしさと疑問が、頭の中で、めちゃくちゃに混ざり合って……うっすらと涙目になった時。
「遅い」
東条社長の短い言葉が響いたかと思うと。
彼の腕が再び伸びてきて、私の頭の後ろに回され、強引に引き寄せられた。
(あ……っ)
私の体は、バランスを失って。
東条社長の膝の上に、崩れ落ちた……。
その瞬間……私の思考回路は、完全に停止する。
(もう……ムリ……)
そんな私の心の声は届くこともなく、彼の腕は、私をさらに引き寄せて。
私の唇に、彼の吐息が、かかる。
反射的に、ぎゅっと目をつぶった。
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