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そうして、東条社長の唇が、私の唇に少しだけ触れたと思うと。
今度は、彼の舌先が入ってきて、私の下唇をなぞる……。
「……っ」
何も言えない私の唇から、彼の舌先がチョコレートを絡めとるまで、ほんのわずかな時間だった。
それなのに……。
永遠にも似た、長い長い時間に思えた。
私の唇から、チョコレートを奪い取った彼の唇は、痺れるような甘い余韻だけ残して、再び離れていく。
カリ……ッ
私の唇のすぐ横で、チョコレートの砕かれる音。
「……ラム酒か」
小さな呟きと共に、ほんのり漂うお酒の香り。
どんなチョコレートを作るか迷って、選んだのは。
ラム酒入りのチョコレート。
私はお酒苦手だけど、社長なら、きっとお酒入りの方が喜んでもらえそうって、思ったから……。
チョコレートを食べた彼は、自分の膝の上に乗ったままの私を見上げた。
上目遣いの切れ長な目に射抜かれて、心臓が小さく跳ねる。
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