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少し離れた距離から、闇色の瞳が私を捉えている。
さっきのキスなんて、何でもなかったかのように冷静な視線。
(私のこと……どう思ったの?)
それとも、何にも感じなかったの?
いきなり夜のオフィスで待ち伏せされて、チョコ押し付けられて……迷惑だった?
でも、それじゃ、どうして……。
あんなキスしたの?
言いたいことは溢れるほどあるのに、ただ彼の返事を待つことしか出来ない。
すると、心の中で一人葛藤する私の耳に、低く甘い声が伝わってきた。
「君のパソコンに……新しい番号が入っています」
東条さんの声に、私は自分の世界から引き戻される。
「……えっ?」
突然の言葉に、その意味が理解できない。
「会いたくなったら、その番号にかけて」
また掻き回された頭の中を整理する。
それって、つまり。
東条さんの番号ってこと?
「あ、あの……!」
「お休みなさい。綾瀬 結衣さん」
戸惑う私をそのままに、そう言って社長はフロアを一人出ていった。
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