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「あんなの、単なる噂って思ってた」
「……え?だって、見たんだよね、実際に?受付の子が」
「はぁ?あんなの嘘に決まってるし」
さらりと言いのけた菜々美に、私は肩を震わせた。
「何、それ!?ひどーい!!」
「冷たい夜のオフィスで、一人チョコ持って待ちぼうけすれば、頭が冷やされて、夢から醒めるかなって思ってさ」
怒る私なんて全く気にも止めず、菜々美は、フォークに巻きつけていたアラビアータを一口食べる。
「にしてもさ~。噂が、ほんとだったのもビックリだけどさ。その後の展開が、あり得ないわ」
菜々美の言葉に、また顔が熱くなった。
「私もまだ、夢みたいだよ」
私は呟くと、テーブルに置いてあったスマホを手にする。
スマホの中には、あの夜、パソコンに入れられていた東条さんの番号が入っている。
仕事用のか、プライベートのかは分からないけど……例え、仕事用のだとしても、みんなが知ってるわけじゃない。
その番号を教えてくれただけで、嬉しい。
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