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「ねぇ、結衣」
「ん、何?」
スマホの電話帳に入った社長の番号を見つめながら、聞き返した。
「結衣はさ、『割り切った』恋愛って、したことある?」
「……え?」
そのイキナリな質問に、私はスマホ画面から、菜々美に視線を移す。
「な……何よ、突然。割り切ったって……どういう意味よ?」
「だからさ……例えば、一晩だけとか。お互いに踏み込み過ぎない付き合いとか。そういうのよ」
「そういうのはないよ……。ちゃんと、相手の人から『付き合おう』って言われて。そこから、ちゃんと付き合ってきたよ?」
私の答えに、菜々美は渋い顔をした後、ため息をついた。
「……だよ、ね」
「ちょっと、何なの?私の過去の恋愛なんて、今、どうでもよくない?」
私の言葉に、菜々美は、妙に真面目な顔つきをして一言放つ。
「結衣。やっぱ、あんたは……東条さん、止めた方がいい」
冷たく言われた一言に、動揺しながら私は反論した。
「な、何よ、いきなり?何で、そんなこと言うわけ……?」
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