決意

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 4月5日。僕は高校へ入学した。澄み渡る空も桜の艶やかなピンクも僕にとっては心躍るものではなかった。  みな、期待と緊張に満ちた晴れやかな顔をしていた。僕も自分の運命を知らなければきっとみなと同じ気持ちだっただろう。  しかし、違う。  僕は暗雲たる気持ちで新しいクラスメートの横顔を眺めていた。  ーーーと、クラスの片隅にゴキブリのように身を寄せあい蠢く奴らが僕の目に飛び込んできた。  間違いない。アイツらだ。  まだ新入生の僕らは出席番号順に席が割り当てられている。  もっとも外見からして大人しく割り当てられた場所に収まる奴らには到底見えないが、僕は出席番号から名前に当りをつけた。  廊下側の一番隅の席。僕はさりげなく、廊下に出て談笑する別の生徒たちに紛れて、中にいるアイツらの情報を探った。  一人は席の通り、柿田純(かきたじゅん)。柔道でならした体型はずんぐりとして、頭は短く刈り込んでいる。声が大きくやたらと怒鳴り散らす横柄な男だ。  二人目は隣の席で、中井影敏(なかいかげとし)。天然パーマの癖毛でマユの細さに異様なこだわりを見せる。いつも他人をバカにしたようにニタニタと不気味な笑いを浮かべている。  どの面を見てもとても高校生になったばかりの人間の面には見えない。  
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