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第4章 山粧う ~あの空き地で…~
「ライム~」
獅虎がライムを呼ぶと,ライムは獅虎にかけより,嬉しそうに鼻を突きだす。
獅虎がそっと指を出すと,ライムは鼻をその指にちょこんとつける。
獅虎はライムを抱き上げた。
「相変わらず,ライムは俺が好きだなあ」
そういうと,ライムはお互い様でしょという顔をしながらゴロゴロと喉を鳴らした。
「そうだったなあ…あの子…伊葉は元気にしてるのかな」
獅虎はライムと出会ったあの日のことを思い出していた。
ライムに引き合わせてくれたのは,伊葉という小学校4年生くらいの女の子。
伊葉には大樹という兄がいた。大樹は小さいころ,よく一緒に遊んでいた記憶がある。確か3つくらい年下だったはず。
そうすると伊葉は,もう少し小さかったはずだから6歳くらい年下だったか…?
伊葉は,女の子だったし,かなり歳が離れていたので,一緒に遊んでいたというよりは,ときどきお守りがてら遊んであげていた…という印象が獅虎にあった。
生まれたばかりで家に戻ってきた伊葉の顔をみんなでのぞき込んだ赤ちゃんってこんなに小さいんだなと思ったのをよく覚えている。
伊葉がまだ園児だったころは,出会うと「お兄ちゃん!」と言いながら,かけよってきて,抱っこやおんぶをせがまれたのも思い出していた。
兄弟のいない獅虎にとっては,大樹や伊葉など近所の子どもたちは,兄弟のようなものだった。
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