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《 ガチャ 》
「お疲れ様」
わたしが車のドアを空けると、直ぐに心地よい低音を帯びた柔らかな声が耳へと届く。
「うん。ありがとう、待たせちゃったかな?」
わたしは、そう言って。
一度。彼へと視線を合わせると、労いと感謝を込めて言った。
「なに、こんなことは何でもないさ。大丈夫! まぁ、それに。僕も今さっき着いたばかりだ」
「そっか、良かった♪」
そう言って微笑み掛けてくれる主人。
再び笑顔で返すわたし。
… 嘘。
わたしは知ってる。
主人はとても優しい人だ。
だから、彼は時々こうした"優しい嘘"をついたりする。
わたしを気遣い、わたしを想い。
わたしを傷つけまいと、わたしの為の嘘をつく。
… そう。
主人はとても優しい男性-ヒト-だ。
だから。
わたしにとって、とても尊く大切な人。
でも …
あのひとは少し違う。
… いえ。
大分違う。
ねぇ、誠。
幸せって、なんだろうね?
… … …
… … …
… … まこと。
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