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「みっちゃん、手……」
そう言って差し出された手は、頼りなさげに私の手を待っていた。
恐る恐る手を伸ばし、そっと包み込む。
ふわりと人肌の温かさが掌越しに伝わってくる。
それは掌から腕をのぼり、肩を伝いやがて私の体の奥にまで届いた。
少し戸惑って隣を見ると、彼女は私に向かって無邪気に笑った。
「あったかいね」
心臓がすとんと落ち着いた。
大丈夫だよ。
何も心配いらない。
私の隣にいる間は、何もあなたを傷付けない。
私は彼女の瞳の中を覗き込んだ。
瞳の奥が頷くようにきらりと光る。
「行こうか」
私達はゆっくりと歩き出す。
さくさく雪が足元で砕けた。
宛もない旅を始めよう。
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