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暖冬とはいえ、夜の街は冷たい風が吹き抜ける。
二歩まえを行く紘斗が、姫良の風よけになった。
が、その背中に怒りが見えて、冬の風より冷たい感触が伝わってくる。
姫良は自分が紘斗に何を求めているのかわからない。
クリスマスイヴの夜、ふたりは姫良のマンションで一夜をすごした。
時折、紘斗の大学時代と、現在進行形の姫良の大学生活の話をするくらいで、クリスマスにふさわしい曲が流れ続けるテレビ番組を、意味もなくつけっぱなしにして眺めていた。
そのうち、紘斗は仕事の疲れからかソファにもたれて眠りこみ、姫良もその横でいつの間にか眠っていた。
起きたときは朝も遅く、紘斗の姿もすでになかった。
姫良にかけられたブランケットから、かすかに紘斗が愛用している煙草の香りがした。
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