第一章 自宅は海辺の丘に

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「貧乏性のお前もようやく楽をする気になったか?」  能動的に働く素振りを暫く見せていないので、彼女がつついてきた。いつでも好きにしろが変わらぬ態度である。  ――やらねばならんときにはやるさ。今は単に俺がやる必要がないだけだ。 「どうだかな。明日椅子に座っているとは限らないし、ここで平和に浸り続ける可能性もあるからな」  なるようになる、身構えてもどうしようもないことが多すぎた。  だが時に苦境があるくらいの方が長生き出来るとも思っていた。 「ふん。最近少し太ったんじゃないか?」  ――うむ。実はそれは感じていた。 「レティアは変わらんな」  過酷な日課をサボり娘と、妻と過ごす日々が長くなり身体能力が衰えを見せていた。  だが耳が痛いことを言うやつも無く、更には比較するような相手も居ないのが原因だ。 「誤魔化すな。努力しろよ」 「ああ、そうする」  口に出した以上はやらねばならない。何より腹が突き出たような体型になるのはちょっとした恐怖感があった。  まだまだ人生は折り返しもしていない、健康管理は自身への課題である。
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