第五章 死の囁きは永遠に

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「この基地は被害を受けています。原因がどうあれこうなった責任は誰かが引き受けねばなりません」 「不思議なものでな、勝てば何も問われはしないが、勝ちの定義は曖昧なものだ」  結果をいかに捉えるかは司令官次第である。死者の数より大切な部分は多々あるらしく、職位の更迭を回避するのは最上位になる。 「軍事教官の成果が上がっているならば、こうまで苦戦しなかったのではないでしょうか」 「そうとも言えるし、違うとも言えるな」  肯定も否定もしない、相手が何を考えているかを探っている風でもない。やりとりを楽しんでいる、それが一番近いだろうか。 「被害不手際一切を引き受けて口を閉ざす責任者に打ってつけです。残っても脱出しても危険に変わりはありませんが、他人任せの未来をお選びになりますか?」 「なるほど、それが私の動機なわけか」  小さくこくこくと頷きながら正論だろうなと認める。爆音が響いた、外に目をやると兵が西に向けて走っていくのが見えた。西門が破壊されたと叫んでいるのがここにまで聞こえてくる。
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