第六章 代償は屍の山

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「出入口はソマリア軍に固められております、別の脱出口は存在しないのですか?」  部隊の指揮権はエーン少佐が握っている。マケンガ大佐も、島ですらも直接は兵を動かし得ない。現実は何とも言い難いが、制度上はそうなる。  上官がそれを蔑ろにしては自らの不利益にも繋がるので、破るのは自殺行為と評して良い。その位のことを理解していない者が上級将校にはなれないので、今は問題ない。 「無い。だが兵を欺くことは不可能ではあるまい」  ――マケンガ大佐もグロックのような性格か? やけに勿体ぶるな。  島は黙って二人のやり取りを聞いている。目は周囲を広く観察し、頭は不意の危険を探り、体は即応出来るように少し膝を曲げて力を抜いていた。 「避難を求め、強行を?」 「背中を撃たれない保証はないな。貴官は泥水を飲み干す決意はあるかね?」 「あります!」  エーン少佐は強く即答し真っ直ぐ目を見た。自身が犠牲になるのもいとわないのだ、泥水だろうとなんだろうと躊躇はない。マケンガ大佐が島に目線をやるが、特に何も口を挟まなかった。
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