第六章 代償は屍の山

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 南北側面からはクァトロの中距離射撃が舞い込んでくる。うかうかしていたら被弾してしまう。 「大佐、この部隊の指揮官に攻勢に出るよう指導をお願いします」 「ふむ。まあ良かろう」  確率が低い賭けに巻き込まれるよりは、手順を踏むべきだと納得する。指揮官に近寄り「中将閣下は敵がすごすごと逃げ帰るまで籠るような態度を、勇気の欠如と見なすだろう」直接的な表現をしない。ところが指揮官は中将の考えに反すると、更迭なり処刑なりがまっていると考えた。ここがアフリカなのが大きい、人命は先進諸国に比べ余りにも軽い。 「侵入者を追い出せ!」  大尉が順調に防衛していた西側のラインを強引に押し上げようとする。虚を衝かれたルワンダ兵は意気地なく、いともあっさりと後退を始めてしまう。  手応えを感じたのか、更に敵を追うようにと命令を下した。良いのか悪いのか次々とソマリア兵が進出をし、エスコーラは西門近くにまで戻されてしまう。 「大佐、前進します」  上手くいったので助言に感謝し笑顔だ。受けた被害は無視する、それがこの国のやりかたである。
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