第六章 代償は屍の山

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 ソ連将校が残していった文化は健在で、いかに相手に被害を与えたかを重視するのだ。  戦線を押し上げると死体があちこちに転がっている。不利な側は味方を収容している余裕が無くなるのと、ソマリア軍はそもそもが放置していたせいで、まさに屍の山である。  ――通信兵の死体だ! 機械を背負ったまま仰向けに倒れているぞ!  エーンも見付けたらしく、それを取りに向かう。戦場で敵から装備を奪うのは常識なので、罠に注意しながら電源が入るか確めた。  ――奪うにしてもソマリア兵からでなく、味方を犠牲にしてとは思わなかった。  使ったことがない種類ではあったが、元々周波数が設定されていたので、スイッチさえ入ればそれで何とか出来た。 「下がるな、対抗するんだ!」  無線機からルワンダ語が漏れてくる。エーンはにやりともせずに発信を押しながら喋り始めた。 「キシワを見ろ!」  何かの暗号か、それとも……ルワンダ兵が不明を報告する。長いと不審に思われ短いと伝わらない、その中でボスに届くだろう単語を厳選した。
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