第六章 代償は屍の山

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 たったの一秒程ではあったが、稀にそのような現象が起こることがあった。たまたま弾丸補給のタイミングが重なった、戦場の間隙。  準備が出来たとカーポがマイクを渡す。 「聞こえていたら空に発砲しろ!」  日本語をスピーカーで発した。ソマリアの交戦地域、それもソマリア軍基地で言葉を理解する人物が他に居るはずがない。  すぐに戦線後方、今さっきまでソマリア軍の中隊指揮所があったあたりで、空に向けて銃撃した兵を視認したと報告があがる。 「司令部西側五十メートル、十人弱のグループだ!」  すぐに全部隊に通達された。意味がわからなくとも関係無い、皆が従った。 「ワリーフ、あたしらも出るよ!」 「了解! リュカ曹長、親衛隊に命令だ」 「ダコール」  俄に部隊が動き始める。ラズロウ直下の腕利きが、この日初めて銃を構えた。装甲車両に座しているドン・プロフェソーラを守るのが至上命令である。 「前衛を抜け! 最初に敵の指揮所に突入した奴に百万ドルくれてやる!」  まだ繋がっていたスピーカーから煽動の言葉が響く。ルワンダ兵の目の色が変わった。
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