第六章 代償は屍の山

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「上空よりロマノフスキー大佐。南からアルシャバブの一団が軍基地に向かっている、十五分で到達の見込み。一旦西に離脱するんだ」  エスコーラの足止め部隊が後退したらしく、いよいよ劣勢が顕著になる。目的を果たした今、この場に留まる必要はない。  ――西に突き進めばキスマヨだが、そこまで上手くはいかんだろうな。 「誘導に従え、逃げるが勝ちだよ」  カーポがラズロウにプロフェソーラの言葉を伝える。決定は彼女がするが、執行は彼だ。  殿は戦奴を無理矢理に残した。代わりにクァトロが先行して危険を分担する。 「兄弟、超過勤務ご苦労。どこに行くつもりなんだ」  通信機を借りてドイツ語で話し掛ける。ロシア語は案外理解者が居そうだったからだ。 「元気な声が聞けて涙が出そうですな。例の沿岸要塞にでもいかがですか」  ――東海岸なら海から離脱も可能になるしな。問題はそこに辿り着けるか、だ。 「俺に文句なんて無いさ。盗賊が巣食っていて拒否なんてのは笑えんぞ」  暫く放置していたのだ、イレギュラーの二つや三つはあるだろう。
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