第六章 代償は屍の山

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 言葉を返せず、目も合わさずに黙って席につく。形としては今も上席の師が最後に入ってくるが、やはり足取りは重い。計画を進めたのは誰でもない、自分なのだから余計だ。 「中将、報告を」  苦い話しか出てこないと知りつつそう声をかける。トーンも低く中将が現状を明らかにする。 「軍基地に軟禁していたイーリヤ将軍は、ギャングスターとクァトロ軍による共同攻撃で混乱した隙に脱出されてしまった」  幾つもの事実を伏せて話すものだから理解が進まない。先程の次席がわざと蒸し返す。 「ほう、どのように逃げられたのですかな。基地には千人からの兵がいたはずですが、大軍がやってきましたか」  ここぞとばかりに嫌みを重ねる。概ね状況は知っているはずなのに、わざわざ中将の口から言わせたいのだ。 「軍事教官の手引きで、空挺兵が内部から救出した。将校が多数テロにあって死傷し、目が届かなかったのだ」 「我々の幹部も多くが被害を受けている。無事なのはここにいる面々のみだ」  師が協力しなければと間に割って入る。
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